介護職員初任者研修のシラバス

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9. こころとからだのしくみと生活支援技術(76時間)

基本知識の学習の後に、生活支援技術等の学習を行い、最後に事例に基づく総合的な演習を行う。

基本知識の学習…10時間
  1. 介護の基本的な考え方
  2. 介護に関するこころのしくみの基礎的理解
  3. 介護に関するからだのしくみの基礎的理解
生活支援技術の講義・演習…54時間
  1. 生活と家事
  2. 快適な居住環境整備と介護
  3. 整容に関連したこころとからだのしくみと自立に向けた介護
  4. 移動・移乗に関連したこころとからだのしくみと自立に向けた介護
  5. 食事に関連したこころとからだのしくみと自立に向けた介護
  6. 入浴、清潔保持に関連したこころとからだのしくみと自立に向けた介護
  7. 排泄に関連したこころとからだのしくみと自立に向けた介護
  8. 睡眠に関連したこころとからだのしくみと自立に向けた介護
  9. 死にゆく人に関連したこころとからだのしくみと終末期介護
生活支援技術演習…12時間
  1. 介護過程の基礎的理解
  2. 総合生活支援技術演習

(1)到達目標・評価の基準

ねらい
  • 介護技術の根拠となる人体の構造や機能に関する知識を取得し、安全な介護サービスの提供方法等を理解し、基礎的な一部または全介助等の介護が実施できる。
  • 尊厳を保持し、その人の自立及び自律を尊重し、持てる力を発揮してもらいながらその人の在宅・地域等での生活を支える介護技術や知識を習得する。
修了時の評価ポイント
  • 主だった状態像の高齢者の生活の様子をイメージでき、要介護度等に応じた在宅・施設等それぞれの場面における高齢者の生活について列挙できる。
  • 要介護度や健康状態の変化に沿った基本的な介護技術の原則(方法、留意点、その根拠等)について概説でき、生活の中の介護予防、および介護予防プログラムによる機能低下の予防の考え方や方法を列挙できる。
  • 利用者の身体の状況に合わせた介護、環境整備についてポイントを列挙できる。
  • 人の記憶の構造や意欲等を支援と結びつけて概説できる。
  • 人体の構造や機能が列挙でき、何故行動が起こるのかを概説できる。
  • 家事援助の機能と基本原則について列挙できる。
  • 装うことや整容の意義について解説でき、指示や根拠に基づいて部分的な介護を行うことができる。
  • 体位変換と移動・移乗の意味と関連する用具・機器やさまざまな車いす、杖などの基本的使用方法を概説でき、体位変換と移動・移乗に関するからだのしくみが理解され、指示に基づいて介助を行うことができる。
  • 食事の意味と食事を取り巻く環境整備の方法が列挙でき、食事に関するからだのしくみが理解され、指示に基づいて介助を行うことができる。
  • 入浴や清潔の意味と入浴を取り巻く環境整備や入浴に関連した用具を列挙でき、入浴に関するからだのしくみが理解され、指示に基づいて介助を行うことができる。
  • 排泄の意味と排泄を取り巻く環境整備や関連した用具を列挙でき、排泄に関するからだのしくみが理解され、指示に基づいて介助を行うことができる。
  • 睡眠の意味と睡眠を取り巻く環境整備や関連した用具を列挙でき、睡眠に関するからだのしくみが理解され、指示に基づいて介助を行うことができる。
  • ターミナルケアの考え方、対応のしかた・留意点、本人・家族への説明と了解、介護職の役割や他の職種との連携(ボランティアを含む)について、列挙できる。

(2)内容例

指導の視点
  • 介護実践に必要なこころとからだのしくみの基礎的な知識を介護の流れを示しながら、視聴覚教材や模型を使って理解させ、具体的な身体の各部の名称や機能等が列挙できるように促す。
  • サービスの提供例の紹介等を活用し、利用者にとっての生活の充足を提供しかつ不満足を感じさせない技術が必要となることへの理解を促す。
  • 例えば「食事の介護技術」は「食事という生活の支援」と捉え、その生活を支える技術の根拠を身近に理解できるように促す。さらに、その利用者が満足する食事が提供したいと思う意欲を引き出す。他の生活場面でも同様とする。
  • 死に向かう生の充実と尊厳ある死について考えることができるように、身近な素材からの気づきを促す。
内容
  1. Ⅰ.基本知識の学習…10時間
    1.介護の基本的な考え方
    ○理論に基づく介護(ICFの視点に基づく生活支援、我流介護の排除)、
    ○法的根拠に基づく介護

    2.介護に関するこころのしくみの基礎的理解
    ○学習と記憶の基礎知識、○感情と意欲の基礎知識、○自己概念と生きがい、○老化や障害を受け入れる適応行動とその阻害要因、○こころの持ち方が行動に与える影響、
    ○からだの状態がこころに与える影響

    3.介護に関するからだのしくみの基礎的理解
    ○人体の各部の名称と動きに関する基礎知識、○骨・関節・筋に関する基礎知識、ボディメカニクスの活用、○中枢神経系と体性神経に関する基礎知識、○自律神経と内部器官に関する基礎知識、○こころとからだを一体的に捉える、○利用者の様子の普段との違いに気づく視点

    Ⅱ.生活支援技術の学習…54時間
    4.生活と家事
    家事と生活の理解、家事援助に関する基礎的知識と生活支援。介護食調理実習を行う
    ○生活歴、○自立支援、○予防的な対応、○主体性・能動性を引き出す、○多様な生活習慣、○価値観

    5.快適な居住環境整備と介護
    快適な居住環境に関する基礎知識、高齢者・障害者特有の居住環境整備と福祉用具に
    関する留意点と支援方法
    ○家庭内に多い事故、○バリアフリー、○住宅改修、○福祉用具貸与

    6.整容に関連したこころとからだのしくみと自立に向けた介護
    整容に関する基礎知識、整容の支援技術
    ○身体状況に合わせた衣服の選択、着脱、○身じたく、○整容行動、○洗面の意義・効果

    7.移動・移乗に関連したこころとからだのしくみと自立に向けた介護
    移動・移乗に関する基礎知識、さまざまな移動・移乗に関する用具とその活用方法、利用者、介助者にとって負担の少ない移動・移乗を阻害するこころとからだの要因の理解と支援方法、移動と社会参加の留意点と支援
    ○利用者と介護者の双方が安全で安楽な方法、○利用者の自然な動きの活用、○残存能力の活用・自立支援、○重心・重力の働きの理解、○ボディメカニクスの基本原理、○移乗介助の具体的な方法(車いすへの移乗の具体的な方法、全面介助でのベッド・車いす間の移乗、全面介助での車いす・洋式トイレ間の移乗)、○移動介助(車いす・歩行器・つえ等)、○褥瘡予防、○車イスでの介護タクシーへの乗降

    8.食事に関連したこころとからだのしくみと自立に向けた介護
    食事に関する基礎知識、食事環境の整備・食事に関連した用具・食器の活用方法と食事形態とからだのしくみ、楽しい食事を阻害するこころとからだの要因の理解と支援方法、食事と社会参加の留意点と支援
    ○食事をする意味、○食事のケアに対する介護者の意識、○低栄養の弊害、○脱水の弊害、○食事と姿勢、○咀嚼・嚥下のメカニズム、○空腹感、○満腹感、○好み、○食事の環境整備(時間・場所等)、○食事に関した福祉用具の活用と介助方法、○口腔ケアの定義、○誤嚥性肺炎の予防 〇アイマスクを使用しての視覚障害者への食事介助演習

    9.入浴、清潔保持に関連したこころとからだのしくみと自立に向けた介護
    入浴、清潔保持に関連した基礎知識、さまざまな入浴用具と整容用具の活用方法、楽しい入浴を阻害するこころとからだの要因の理解と支援方法
    ○羞恥心や遠慮への配慮、○体調の確認、○全身清拭(身体状況の確認、室内環境の調整、使用物品の準備と使用方法、全身の拭き方、身体の支え方)、○目・鼻腔・耳・爪の清潔方法、○陰部清浄(臥床状態での方法)、○足浴・手浴・洗髪(受講生全員が体験する)
    ○浴槽を持込んでの「入浴」演習

    10.排泄に関連したこころとからだのしくみと自立に向けた介護
    排泄に関する基礎知識、さまざまな排泄環境整備と排泄用具の活用方法、爽快な排泄を阻害するこころとからだの要因の理解と支援方法
    ○排泄とは、○身体面(生理面)での意味、○心理面での意味、○社会的な意味、○プライド・羞恥心、○プライバシーの確保、○おむつは最後の手段/おむつ使用の弊害、○排泄障害が日常生活上に及ぼす影響、○排泄ケアを受けることで生じる心理的な負担・尊厳や生きる意欲との関連、○一部介助を要する利用者のトイレ介助の具体的方法、○便秘の
    予防(水分の摂取量保持、食事内容の工夫/繊維質の食物を多く取り入れる、腹部マッサージ)

    11.睡眠に関連したこころとからだのしくみと自立に向けた介護
    睡眠に関する基礎知識、さまざまな睡眠環境と用具の活用方法、快い睡眠を阻害するこころとからだの要因の理解と支援方法
    ○安眠のための介護の工夫、○環境の整備(温度や湿度、光、音、よく眠るための寝室)、○安楽な姿勢・褥瘡予防

    12.死にゆく人に関連したこころとからだのしくみと終末期介護
    終末期に関する基礎知識とこころとからだのしくみ、生から死への過程、「死」に向き合うこころの理解、苦痛の少ない死への支援
    ○終末期ケアとは、○高齢者の死に至る過程(高齢者の自然死(老衰)、癌死)、○臨終が近づいたときの兆候と介護、○介護従事者の基本的態度、○多職種間の情報共有の必要性

    ※「Ⅱ.生活支援技術の学習」においては、総時間の概ね5~6割を技術演習にあて、その他の時間は、個々の技術に関連したこころとからだのしくみ等の根拠の学習及び技術についての講義とする。

    Ⅲ.生活支援技術演習…12時間
    13.介護過程の基礎的理解
    ○介護過程の目的・意義・展開、○介護過程とチームアプローチ

    14.総合生活支援技術演習
    (事例による展開)
    生活の各場面での介護について、ある状態像の利用者を想定し、一連の生活支援を提供する流れの理解と技術の習得、利用者の心身の状況にあわせた介護を提供する視点の習得を目指す。
    ○事例の提示→こころとからだの力が発揮できない要因の分析→適切な支援技術の検討→支援技術演習→支援技術の課題(1事例1.5時間程度で上のサイクルを実施する)
    ○事例は高齢(要支援2程度、認知症、片麻痺、座位保持不可)から2事例を選択して実施

    ※本科目の6~11の内容にても、「14.総合生活支援技術演習」で選択する高齢の2事例と同じ事例を共通して用い、その支援技術を適用する考え方の理解と技術の習得を促す。

    ※本科目の6~11の内容における各技術の演習及び「14.総合生活支援技術演習」にては、一連の演習を通して受講者の技術度合いの評価(介護技術を適用する各手順のチェックリスト形式による確認等)を行う。